理由1. Googleの口コミが悪いと視能訓練士は応募しない
これが最もインパクトが大きく、最も見落とされている原因です。
視能訓練士が求人を見つけてクリニック名を検索した時、最初に目に入るのがGoogleマップの口コミと星の数です。たとえ口コミが患者さん視点のものであっても、「受付の対応が冷たい」「待ち時間が長すぎる」「先生が怖い」といった内容が並んでいれば、求職者は「ここで働くのはしんどそうだな」と感じます。
星が3.0を切っているクリニックは、それだけで候補から外される可能性が高い。逆に星が4.0以上で「スタッフの方が親切でした」といった口コミがあれば、それだけで「良さそうな職場だな」という印象を持ってもらえます。
改善策
口コミの評価を一朝一夕で上げることはできませんが、できることはあります。
・ 低評価の口コミに丁寧に返信する:無視するより、真摯に返信している方が印象は良い。求職者は「この先生は批判にも向き合う人だ」と見ている
・ 良い体験をした患者さんに口コミを依頼する:待合室にQRコードを置く、会計時に一声かけるなど、仕組みとして口コミが集まる導線を作る
・ 口コミで指摘された問題を実際に改善する:待ち時間が長い→予約システムを見直す、受付の対応→スタッフ研修を行う。改善した事実を口コミ返信で伝える
重要なのは、口コミ対策は患者さんのためだけでなく、採用のためでもあるという意識です。
ただし、口コミが悪い=悪いクリニックとは限らない
ここで一つ、現場で実際にあった話をします。
Googleの口コミ評価が低く、求人サイトに掲載しても直接応募がほぼゼロというクリニックがありました。しかし、当社の担当が実際にそのクリニックを訪問してみると、院長の人柄も良く、スタッフ同士の雰囲気も温かい、とても働きやすい環境だったのです。
口コミの低評価は、たまたま待ち時間に不満を持った患者さんの投稿が目立っているだけで、クリニックの本質とは大きくかけ離れていました。
そこで当社の担当が、候補者に「口コミだけで判断せず、まず自分の目で見てほしい」と伝え、見学と面接をセッティングしました。実際に院内の雰囲気を見た候補者は「思っていたのと全然違う。ここで働きたい」となり、入職後も長く定着しています。
この話が示しているのは、口コミが悪いクリニックには2つのパターンがあるということです。
1. 本当に内部に問題があるケース → 口コミの改善と同時に、職場環境の見直しが必要
2. 実態は良いのに口コミだけが悪いケース → 求人サイトの直接応募では伝わらない。クリニックを知っている第三者が橋渡しすることで初めてマッチングが成立する
後者のパターンは意外と多いです。そして、これこそが求人サイトだけに頼った採用の限界でもあります。口コミの改善努力は続けつつも、それだけでは解決しない部分を補う手段を持っておくことが大切です。
理由2. ホームページを見ても「どんなクリニックか」わからず応募に至らない
求人票を見た視能訓練士が次に必ず見るのが、クリニックのホームページです。
ここで致命的なのが以下のパターンです。
・ ホームページが古い
デザインが10年前のまま。スマホ対応していない。院長の写真がいつ撮ったのかわからない(明らかに今より若い頃の写真がそのまま載っているケース、実は非常に多いです)
・ スタッフ紹介がない
「誰と一緒に働くのか」がわからないのは、求職者にとって大きな不安材料。特に視能訓練士が何名体制なのかは必ず気にするポイント。1名体制なのか3名体制なのかで、働き方もスキルアップの環境も全く違う
・ 院長の顔・人柄が見えない
経歴だけでなく「どんな考えでクリニックを運営しているか」が見えないと、面接に行く気にならない
・ 診療内容が曖昧
「一般眼科」とだけ書いてあって、手術をしているのか、どんな検査機器があるのかわからない
視能訓練士にとって、ホームページは「ここで自分のスキルが活かせるか」「成長できる環境か」を判断する重要な情報源です。
改善策——ただし、現実的にどこまでやれるか
ここまで読んで「じゃあHPを直さなきゃ」と思った院長先生もいるかもしれません。しかし正直なところ、日々の診療で忙しい中で、HP更新のためにスタッフの写真を撮って、院長メッセージを書いて、設備情報を整理して——そこまで手が回るでしょうか。
しかも、HPのリニューアルには数ヶ月かかります。口コミの改善にはもっとかかる。でも現実には、退職者が出たら来月から診療が回らない。「じっくりHPを整えてから採用しましょう」なんて悠長なことは言っていられません。
やれるならやった方がいい項目を挙げておきます。
・ 院長の一言メッセージ(数行でいい)
・ スタッフの集合写真1枚
・ 主な検査機器の名前と写真
ただ、これは「できればベター」であって、ここに時間をかけるのが最善かというと、必ずしもそうではありません。HPを完璧にするより、もっと直接的に効果がある方法があります。
ただし、HPだけでは「現場の空気感」は伝わらない
ここで正直な話をします。ホームページを改善することは大事ですが、求職者が本当に知りたい情報の多くは、HPには載せられません。
視能訓練士が転職先を選ぶ時、本当に気にしているのはこういうことです。
・ 検査機器が何台あるかではなく、1日にどんなペースで検査を回しているか
・ 視能訓練士が何名いるかではなく、先輩はどんな人柄で、質問しやすい雰囲気か
・ 院長の経歴ではなく、院長がスタッフにどう接しているか
こうした「現場の空気感」は、どれだけホームページを作り込んでも伝えきれるものではありません。むしろ、営業色の強い採用ページを作ると、院長先生自身が違和感を覚えることも多いはずです。
さらに言えば、HPに書いてある情報と実態がズレているケースも少なくありません。
実際にあった話ですが、ゴールドマン視野計(GP)の経験を積みたいと思って、HPの設備紹介に「ゴールドマン視野計あり」と書かれているクリニックに直接応募して入職した視能訓練士がいました。ところが入ってみると、GPは機器としては置いてあるものの実際の検査はハンフリー(HFA)のみで、GPはほぼ使っていなかった。その方にとっては「話が違う」となります。
これはクリニック側に悪意があったわけではなく、HPの設備情報が更新されていなかったり、「置いてある=日常的に使っている」と伝わってしまっただけです。しかし求職者にとっては、キャリアの判断を左右する重大な情報のミスマッチです。
求人サイトからの直接応募では、こうした「HPには載っているけど実態は違う」部分を事前に確認する手段がありません。当社では、担当者がクリニックを直接訪問して院内の雰囲気を見た上で、候補者に「あのクリニックは○○な雰囲気ですよ」「GPは実際には使っていなくてHFAメインです」「先輩のORTさんはこういう方ですよ」と自分の言葉で伝えています。検査機器の数や手術件数といったスペックだけでなく、「実際にそこで働いたらどんな感じか」というリアルな感覚を共有すること。これは求人票やホームページでは絶対にできないことです。
ホームページの最低限の整備は必要。でも、それだけで「うちの良さが伝わるはず」と期待しすぎないこと。伝わらない部分は、伝えられる人に任せるという選択肢があることを知っておいてください。
理由3. 業界内の口コミで視能訓練士に「やめとけ」と言われている
視能訓練士の業界は狭い。養成校は全国で約30校、年間の新卒は約800名程度。同期のネットワーク、前職の先輩後輩、SNSの業界コミュニティで、クリニックの評判は驚くほど早く広まります。
ここで院長先生にとって理不尽な現実があります。辞めた人の声は広がりやすいのに、残って頑張ってくれている人の声は広がらないということです。
退職する人の大半は「人間関係が合わなかった」「思っていた環境と違った」といったネガティブな理由で辞めていきます。そしてその人が同期や知り合いに「あそこはやめた方がいい」と言えば、それが一人歩きする。実際にはその人個人の相性の問題だったとしても、聞いた側は「へぇ、やめとこう」となる。友達の友達レベルの話でも、応募を控える理由としては十分です。
一方で、今も働き続けてくれている視能訓練士は「うちの職場いいよ」とわざわざ外に発信することはほぼありません。満足している人は黙って働き続ける。不満がある人は辞めて外で話す。結果、外に出回る情報はネガティブに偏る。これは院長先生の責任ではなく、構造的な問題です。
改善策
業界内の評判を直接コントロールすることはできません。しかし、この構造を理解した上でできることはあります。
① 退職者と円満に別れる
これが最も重要です。退職時の対応が雑だと、その人は業界内で「あそこはやめた方がいい」と言い続けます。逆に、最後まで丁寧に対応し、「合わなかったけど、悪い職場ではなかった」と思ってもらえれば、少なくとも積極的に悪く言われることは防げます。辞める人に対しても感謝を伝えて送り出すこと。これは将来の採用への投資です。
② 今いるスタッフの満足度を上げる
残ってくれているスタッフが「ここで働けて良かった」と心から思っている状態を作ることが、長期的には最強の採用力になります。直接「うちの職場を宣伝してくれ」と頼む必要はありません。スタッフが自然と知り合いに「うち、働きやすいよ」と言ってくれるようになれば、それが業界内で少しずつ広がっていきます。
③ 外からは見えない良さを、第三者に伝えてもらう
ここが最も現実的な対策です。辞めた人の口コミがネガティブに偏る構造は変えられません。でも、クリニックの内側を知っている第三者が「実際はこういう雰囲気ですよ」「今のスタッフさんはこういう方たちですよ」と候補者に伝えることで、又聞きの情報を上書きできます。
当社でも、クリニック訪問時に院長先生と話す中で「前の人が辞めてから変な噂が広がっちゃって…」と打ち明けられることがあります。そういう時こそ、実際にクリニックを訪問して、今のチームの雰囲気を自分の目で確認し、候補者に正しい情報を届ける。辞めた人の声だけで判断されないようにするのも、私たちの大事な役割だと考えています。
理由4. 求人票が「条件の羅列」で終わっている
ここまでの3つは求人票の外側の話でしたが、もちろん求人票自体の問題もあります。
ただし、よくある「業務内容を具体的に書きましょう」という話だけでは不十分です。問題はもっと根本的で、「なぜこのクリニックで働くべきか」が書かれていないということです。
視能訓練士は複数の求人を比較しています。給与、勤務時間、アクセス——条件面だけで比較されると、結局「少しでも条件が良いところ」に流れます。条件勝負から抜け出すには、条件では表現できない魅力を言葉にする必要があります。
改善策
求人票に以下のような「ストーリー」を加えましょう。
・ 採用の背景
「手術件数が年々増えており、チームを強化したい」→ 成長中の職場であることが伝わる
・ 入職後のキャリアイメージ
「最初は外来検査から始め、半年後には術前検査、1年後には手術室にも入ってもらう予定です」→ ステップが見えると安心する
・ 院長の想い
「うちはORTにも手術に関わってもらう。検査だけでなく、患者さんの人生が変わる瞬間に立ち会える環境を作りたい」→ 条件では伝わらない魅力
求人票は「募集条件の一覧」ではなく、「一緒に働きませんか」というラブレターです。
具体的な求人票の改善方法(書くべき6項目・Before/Afterの実例)は「視能訓練士の採用方法を完全解説【医療機関向け】」のセクション2で詳しく解説しています。
理由5. 給与だけで視能訓練士の応募を集めようとしている
「月給40万出せば応募は来るでしょ?」——はい、来ます。でも、給与だけを理由に来た人は、次にもっと良い条件が見つかれば去ります。
視能訓練士の採用で本当に大切なのは、「応募を増やすこと」ではなく「自院に合う人に来てもらうこと」です。給与が高いに越したことはありませんが、それだけに頼ると以下の問題が起きます。
・ 給与目当ての応募が増え、志向性の合わない人まで面接する手間が増える
・ 入職後に「思ったのと違った」で早期退職されるリスク
・ 既存スタッフとの給与バランスが崩れ、内部の不満に繋がる
改善策
給与は「相場に見合った水準」であればまず問題ありません。そのうえで、給与以外の魅力を言語化して打ち出す。
上記の相場表と自院の提示給与を比較して、大きく下回っていなければ、給与は足切りラインをクリアしている状態です。そこから先は、以下のような給与以外の判断材料が決め手になります。
・ スキルアップの機会
手術件数が多い、最新機器がある、学会発表の機会がある
・ 休日の形態
日祝休みかどうか、完全週休2日か、有給の取りやすさ。「週休2日」と書いてあっても、木曜と日曜の半休を合わせて2日としているケースもあり、求職者はここを細かく見ている
・ 社会保険の種類
意外と見落とされがちですが、社会保険(協会けんぽ)なのか医師国保なのかは、視能訓練士が必ず確認するポイントです。医師国保は保険料が全額自己負担になるケースがあり、求職者からは敬遠される傾向があります。社会保険完備であれば、求人票に明記するだけで安心材料になります
・ チームの雰囲気
人間関係が良い、教育体制が整っている、院長との距離が近い
・ 通勤のしやすさ
駅近、自転車通勤OK、駐車場完備
特に子育て世代の視能訓練士(業界の大半を占める女性が多い職種)にとって、「残業がない」「急な休みに理解がある」は給与よりも優先度が高いケースが非常に多いです。
給与・休日・保険——この3つがすべて求人票に明記されていて初めて、求職者は「条件面は問題ないな」と判断して次のステップ(クリニックの雰囲気や成長環境の検討)に進みます。どれか1つでも不明だと、「確認するのが面倒だからやめとこう」で終わります。
