ここからは、視能訓練士の採用面接で実際に使える質問を7つ紹介します。それぞれ「なぜ聞くのか」「どう判断するか」を、実際の面接で見てきたパターンをもとに解説します。
| # |
質問 |
確認できること |
判断のポイント |
| ① |
前職の退職理由を教えてください |
転職の軸の一貫性 |
時系列で理由がつながるか |
| ② |
当院のどこに興味を持ちましたか? |
志望度・事前調査の深さ |
条件以外の理由が出てくるか |
| ③ |
今の職場を辞めるのは、もったいない気がするのですが |
転職の覚悟・意思の固さ |
揺さぶりに自分の言葉で語れるか |
| ④ |
前職で一番やりがいを感じたことは? |
喜びの源泉・当事者意識 |
具体的なエピソードで語れるか |
| ⑤ |
ご自身の課題は? それに対して何をしていますか? |
自己認識の深さ・成長意欲 |
課題→行動→結果がつながるか |
| ⑥ |
人間関係で困った経験は? 取りづらい人がいたら? |
対人スキル・ストレス耐性 |
具体的な対処行動が語れるか |
| ⑦ |
5年後、どんな視能訓練士になっていたいですか? |
キャリアビジョン・定着意向 |
具体的な成長イメージがあるか |
以下、それぞれの質問について詳しく解説します。
質問① 「前職の退職理由を教えてください」
これは最重要の質問です。退職理由を把握していないと、同じ理由で辞められるリスクがあります。
ポイントは、転職が2回目以降の候補者には、1回目の退職理由と今回の退職理由を時系列で聞くことです。「最初のA総合病院をなぜ辞めたんですか?」「次のBクリニックにはなぜ入ったんですか?」「そのBクリニックを今なぜ辞めるんですか?」と順番に聞いていくと、その人の転職の「軸」が見えてきます。
たとえば、ある候補者は「1社目のA総合病院は検査の幅が広くて勉強になったが、忙しすぎて患者さんとじっくり関われなかった。だからクリニックに転職した。Bクリニックでは患者さんとの関わりは増えたが、今度は手術にも関わりたくなった」と語りました。1社目→2社目→今回の転職が一本の線でつながっていて、キャリアの方向性に一貫性がある。こういう候補者は、自院の環境と志向性が合えば長く定着します。
一方、退職理由が「なんとなく環境を変えたかった」「ちょっと合わなかった」のように曖昧な場合は注意が必要です。転職の軸が定まっていない人は、入職後にまた「なんとなく」辞める可能性があります。
もう一つ確認したいのが、現職にはもう退職の話をしているかどうかです。まだ話していない場合は、退職交渉でどのくらい時間がかかるか、引き止められた場合にどうするか、入職日の目安まで面接の場で確認しておくと後から困りません。視能訓練士は少人数の職場が多いため、1人が抜けると現職のクリニックの診療が回らなくなるケースがあり、引き継ぎに時間がかかることを想定しておく必要があります。
質問② 「当院のどこに興味を持ちましたか?」
志望動機の質問です。ただし、ここで確認したいのは「綺麗な志望動機」ではなく、候補者が自院について何を調べてきたかです。
ホームページを見たのか。院長のYouTubeを見たのか。口コミを見たのか。何も見ずに紹介会社から勧められたから来ただけなのか。自院の情報をどれだけ把握しているかが、志望度のバロメーターになります。
良い回答の例としては、「自由診療に特化していて、裸眼で見える喜びという理念に共感した。自分も白内障の術後に患者さんが喜ぶ姿を見てきたので、その先にあるICLに関わりたいと思った」。具体的で、自分の経験と志望理由がつながっています。
一方、「休みが多かったので」「家から近いので」という条件面だけの回答は懸念材料です。条件が動機のすべてではいけないということではありません。ただ、条件だけで来た人は、より良い条件が見つかれば去ります。条件面の魅力に加えて「それ以外にここで働きたい理由」が出てくるかどうかがポイントです。
質問③ 「今の職場を辞めるのは、もったいない気がするのですが」
これは少し意外に聞こえるかもしれませんが、非常に有効な質問です。あえて引き止める方向の投げかけをすることで、候補者の覚悟と本音を引き出します。
実際にある面接で、経験豊富な検査スキルを持ち、現職でもマニュアル作成や後輩指導まで任されている候補者に、院長が「辞めちゃうのはもったいない気がするんですよ。結構いろんなことやれてるし」と伝えたことがありました。候補者は一瞬考えた後、「確かに良い環境ですが、自分の中でICLを専門的にやりたいという気持ちが固まりました」と明確に答えました。
この質問の狙いは、候補者が「自分がなぜ転職するのか」を、他人に揺さぶられても言語化できるかを確認することです。答えがブレる候補者は、入職後に「やっぱり前の職場の方がよかった」と戻るリスクがあります。逆に、揺さぶりに対して自分の言葉で理由を語れる候補者は、転職の意思が固い証拠です。
注意点として、これは圧迫面接ではありません。「辞めるなんてもったいない」と詰める口調ではなく、「こういう環境を手放すのはもったいないような気がして」と候補者へのリスペクトを込めた言い方をしてください。そうすることで、候補者は「ちゃんと自分の経歴を見てくれている」と感じ、本音で話してくれます。
質問④ 「前職で一番やりがいを感じたことは何ですか?」
この質問で、候補者が「何に喜びを感じるタイプか」が見えます。チーム貢献に喜びを感じる人、スキルアップに喜びを感じる人、患者対応に喜びを感じる人。タイプによって、自院との相性が変わります。
ある面接では、候補者が「入職した時にマニュアルが一切なくて、先輩の見よう見まねで覚えるしかなかった。それが大変だったので、後から入る人のために自分でマニュアルを作った。検査業務をしながらだったので半年以上かかったが、完成した時はすごく達成感があった」と話しました。
この回答からわかるのは、この人は「言われたことをやる」だけでなく、「チームのために自分で課題を見つけて動ける」タイプだということです。少人数のクリニックでは、こうした主体性のあるスタッフは非常に貴重です。
逆に、やりがいについて「特にないです」「毎日同じことの繰り返しだったので」と答える候補者は、仕事への当事者意識が薄い可能性があります。もちろん、淡々と業務をこなすことが悪いわけではありませんが、面接で「やりがい」が出てこない人は、入職後も受け身になりやすい傾向があります。
質問⑤ 「ご自身の課題はどこだと思いますか? それに対して何をしていますか?」
自己認識の深さを確認する質問です。ポイントは、「課題は何ですか?」だけで終わらせず、必ず「それに対して何をしていますか?」をセットで聞くことです。
課題を認識しているだけなら誰でもできます。大切なのは、その課題に対して具体的に行動しているかどうかです。
ある候補者は「慎重すぎて検査に時間がかかることがある。事前に問診と過去の記録を確認して、検査のポイントを整理してから臨むことで、スムーズに進められるようになった」と答えました。課題→具体的な改善策→結果が一本の線でつながっていて、自己分析がしっかりできています。
一方、「コミュニケーションが苦手です」で止まってしまう候補者や、「特に課題はないです」と答える候補者は、成長意欲が低い、もしくは自己認識が浅い可能性があります。
この質問は、候補者が入職後に壁にぶつかった時にどう対処するかの予測にもなります。課題に対して自分で考えて動ける人は、新しい環境でも適応が早い傾向があります。

質問⑥ 「人間関係で困った経験はありますか? コミュニケーションが取りづらい人がいたらどうしますか?」
少人数の眼科クリニックでは、人間関係が離職理由の上位に来ます。この質問で、候補者の対人スキルとストレス耐性を確認します。
「困ったことはありません」は、良い回答に聞こえますが、額面通りには受け取れません。どんな職場でも多少の摩擦はあるもので、「困ったことがない」は「問題を認識していない」か「話したくない」のどちらかです。
重要なのは「困った時にどう対処したか」です。ある候補者は「コミュニケーションが取りづらい人がいたら、自分から声をかけて話しやすい状況を作るようにしている。後輩への指導でも、感情的にならずに具体的な改善点を伝えるよう心がけている」と答えました。具体的な行動が語れる人は、クリニックの人間関係の中でもうまくやっていける可能性が高い。
合わせて「ストレスの発散方法」も聞いておくと良いでしょう。「食べ歩きが好きで、休日は気になるお店に行く」「旅行に行ってリフレッシュする」など、自分なりのストレス解消法を持っている人は、ストレスを溜め込んで突然退職するリスクが低いです。
質問⑦ 「5年後、どんな視能訓練士になっていたいですか?」
キャリアビジョンの質問です。この質問への回答は、定着意向の指標になります。
「後輩の指導に関われる存在になりたい」「ICLの専門性を高めて、レンズ度数の計算まで任せてもらえるようになりたい」など、具体的な成長イメージを語れる候補者は、長期的にその環境で頑張ろうという意思があります。
一方、回答が出てこない候補者は、将来のことを考えていない可能性があります。将来を考えていない人は、目の前の不満をきっかけに「なんとなく」また転職します。
ただし、この質問には注意点があります。候補者が「将来的にはメーカーの営業にも興味がある」と正直に言った場合、それ自体をネガティブに捉える必要はありません。大切なのは、今のタイミングでは臨床の現場で頑張りたいと考えているかどうかです。ある面接で、候補者が一度メーカーへの転職を検討したが「やっぱり患者さんと向き合う仕事がしたい」と思い直して臨床に戻ってきたケースがありました。こうした候補者は、自分のキャリアを真剣に考えた上で臨床を選び直しているので、むしろ定着する可能性が高い。