紹介手数料を見て「高い」と感じる気持ちは、経営者として当然のことです。70万円、80万円という金額は決して小さくありません。
しかし、ここで考えていただきたいのが、「視能訓練士がいない期間に、クリニックが失っているもの」です。
視能訓練士が不在であれば、対応できない検査が出てきます。視野検査、眼底検査、眼鏡処方、斜視・弱視の訓練などは視能訓練士の専門領域です。これらができなければ、患者さんを他院に紹介するか、来院をお断りするしかありません。
さらに、既存スタッフへの負荷集中が起きます。看護師や受付が検査補助に回ることで本来の業務に支障が出る。残業が増え、不満が蓄積する。最悪の場合、他のスタッフの離職につながる。1人の欠員が玉突き的に組織全体に影響するのは、少人数で回しているクリニックほど深刻です。
具体的な数字で考えてみましょう。視能訓練士が1日に担当する患者数は、クリニックの規模にもよりますが20〜40名程度が一般的です。1人の患者に対して屈折検査、視力検査、眼圧検査、OCTなど複数の検査を組み合わせて行うため、患者1人あたりの検査点数は数百点になります。仮に1日20名分の検査枠が視能訓練士の不在で消えた場合、1ヶ月でどれだけの診療報酬を逃すことになるか。院長先生なら、ご自身のクリニックの数字で計算できるはずです。
紹介手数料70〜80万円は、多くのクリニックにとって不在が1〜2ヶ月続いた場合の機会損失よりも小さい金額です。

採用の判断で大切なのは「紹介手数料がいくらか」だけではなく、「採用が遅れることで何を失うか」を合わせて考えることです。
費用だけで紹介会社を選ぶと、結果的に高くつくことがある
ここまで「料率だけで選ばない方がいい」と繰り返してきましたが、もう一つ正直にお伝えしたいことがあります。
当社に相談に来られるクリニックの中には、「以前、料率の安い紹介会社を使ったけど、紹介された人が3ヶ月で辞めてしまった」というケースがあります。料率が低いこと自体は悪いことではありません。ただ、候補者のスクリーニングが甘かったり、クリニックとの相性を十分に見極めないまま「とりあえず紹介」されたりすると、入職後にミスマッチが起きます。
3ヶ月で辞められた場合に失うものを考えてみてください。返金規定で手数料の半額が戻ってくるかもしれません。しかし残りの半額は戻らない。そして、3ヶ月間かけて教えた検査の手順、やっと覚えてもらった院内のルール、「新しい人が来てくれた」と安心していた既存スタッフの気持ち——これらは返金されません。さらに、また採用活動をイチからやり直す手間と時間がかかります。
逆に、料率は高くても、候補者の人柄や志向性まで丁寧に見極めた上で紹介してくれる会社であれば、1回の採用で長く定着してくれる可能性が高い。長期的に見れば、そちらの方がコストは安くつきます。
これは「高い方がいい」と言いたいのではなく、「安いから」という理由だけで選ぶのは危険だということです。紹介会社を選ぶ際に確認すべきポイントは、この後のセクションでまとめます。
紹介会社を選ぶ前に確認したいこと
費用の仕組みが理解できたところで、紹介会社に問い合わせる前に整理しておくとスムーズに進むポイントをまとめます。
自院側で整理しておくこと
・採用したい視能訓練士の条件(常勤or非常勤、経験年数、対応してほしい検査の種類)
・提示できる給与水準(月給の範囲、賞与の有無と条件、手当の内訳)
・採用の緊急度(今すぐ必要か、半年以内でよいか)
・過去の採用活動の状況(何を使って、どんな結果だったか)
紹介会社に確認すべきこと
・料率だけでなく、返金規定の内容(返金期間、返金率)
・眼科の採用にどれだけ精通しているか(OCT、GP、ICLなど眼科特有のスキル要件を理解しているか)
・候補者とどこまで事前面談をしているか
・面接への同行対応があるか
返金規定については、紹介会社によって内容はさまざまです。一般的には入職後1ヶ月以内の自己都合退職で手数料の一部返金、3ヶ月以内で50%程度の返金という構成が多く見られます。返金期間が長く返金率が高い紹介会社ほど、紹介する人材の質に自信を持っていると判断できます。なお、解雇やクリニック都合の退職は返金対象外となるケースが大半です。
支払いのタイミングと経費処理
紹介手数料の支払いは、紹介された人材が実際に入職した時点で発生するのが一般的です。入職日を基準に請求書が発行され、翌月末までに支払うケースが多く見られます。
面接の段階、内定を出した段階では費用は発生しません。内定辞退があった場合も手数料はかかりません。